着物クリーニングの方法の1つとして、一度着物をほどいてから洗う「洗い張り」という洗い方があります。
着物をすみずみまで洗えるため、汚れている着物や古くなった着物も、新品の時のように蘇るところが魅力です。
しかし、昔は主流だった洗い方なのですが、最近は稀な洗い方になっているため、いまいちどんな洗い方なのかわからない方は多いでしょう。
そこで今回は、洗い張りの方法について解説したいと思います。
洗い張りの工程をはじめ、洗い張りのメリットデメリット、どんな時に利用すべきか、さらに洗い張りにおすすめの着物クリーニング店などをお伝えしていきましょう。
洗い張りは一般的な着物クリーニングに比べると高額なクリーニング方法になりますので、しっかり内容を確認してから利用したいですね。
今回ご紹介する洗い張りの方法などがわかると、利用すべきか的確に判断することができるでしょう。
着物クリーニングの洗い張りの方法が知りたい
着物クリーニングで行われるクリーニングには2つの方法があります。
1つ目は「丸洗い」というドライクリーニングで、着物をそのまま丸洗いする方法です。
2つ目は、着物をほどいて反物にしてから水洗する「洗い張り」という洗い方です。
この洗い張りのほうがよく汚れが取れるというメリットがあるのですが、洗い方がわからない方は多いでしょう。
さらに、洗い張りにはどんな効果があるのでしょうか。
まずは、この洗い張りに関する疑問点から考えてみましょう。
洗い張りはどんなクリーニング方法なの?
丸洗いとは、洋服のドライクリーニングのようなクリーニング方法なので、イメージしやすいでしょう。
しかし、洗い張りはどんな方法で洗うのでしょうか。
反物にしてから洗う特殊な方法という曖昧なイメージがあっても、実際どんな方法でクリーニングするのかがわかりにくいですよね。
洗い張りはどんな効果がある?
さらに、洗い張りにはどんな効果があるのでしょうか。
洗い張りはわざわざ反物にしてから洗い、さらに仕立て直す必要があるため、手間や時間がかかります。
そのため、丸洗いに比べて費用はとても高額になるのが特徴です。
高い費用をかけるほどの効果があるのか知りたいですよね。
このように、洗い張りにはわからない部分が多いですよね。
何となくしっかりお手入れできそうというイメージだけで利用すると、「予想と違った…」と失敗してしまうかもしれません。
そこで次の章からは、洗い張りの具体的な洗い方を中心に、どんなメリットデメリットがあるのか詳しく解説したいと思います。
着物クリーニングの洗い張りについて解説!洗い方からメリットデメリットまで詳しく解説
ちょっと特殊な着物クリーニングである洗い張り。
利用する際には、どんな洗い方なのかきちんと理解してからクリーニングに出したいですね。
ここからは「洗い張りとはどんなクリーニング方法なのか」「どんな効果があるのか」を考えていきたいと思います。
洗い張りとは?着物を反物にしてから洗う昔ながらの洗い方
まずは、洗い張りとはどんなクリーニング方法なのか知るために、基本情報をお伝えしていきましょう。
洗い張りを簡単に言うと、着物をほどいて反物の状態にしてから洗うクリーニング方法です。
洗い終わった着物を「張る」工程があることから、洗い張りと呼ばれています。
「着物をほどいて反物にするってどういうこと?」と思うかもしれませんね。
ご存知の方も多いと思いますが、着物はもともと1枚の長い布地から作られています。
そのため、着物をほどいて1つ1つのパーツに分けて、さらにそのパーツの端を縫い付けると、仕立てる前の1枚の長い布地「反物」に戻すことができるのです。
バラバラになっていたパズルをもとに戻すような感じですね。
洗い張りでは、反物の状態にした着物を水と洗剤を使ってブラシでゴシゴシ洗い、水溶性汚れも油溶性汚れもスッキリ落としていきます。
その後、ピンと張ってノリを入れて仕上げ、また着物の状態に仕立てる作業を行います。
とても手間がかかる洗い方ですが、昔はこの洗い張りが主流の洗い方でした。
洋服をほどいたり仕立て直すことをイメージすると非常に面倒ですが、着物の場合はそれほど面倒なものではありません。
ほどいて洗うことを前提に作られていたため、着物の構造がわかっていれば、それほど難しいものではないとされていました。
洗い張りの具体的な洗い方は?
それではもっと詳しく洗い張りの洗い方をご説明したいと思います。
洗い張りは、クリーニング店によってさまざまな方法で行われていますので、ここでは一般的な方法をお伝えします。
参考として見てくださいね。
①着物の縫い糸を解く
まずは、着物を縫い付けてある糸を全て解いていきます。
この作業が意外と大変です。
生地を傷めないように小さな糸も全て解いていく必要があるため、丁寧に行う必要があります。
この時、縫い合わせてあった部分に溜まっていたゴミや糸くずなどがあれば取り除いてきれいな状態にします。
②それぞれのパーツの端を縫い付けて反物の状態にする
全ての糸を解いたら、身頃や袖などのパーツに分かれます。
今度はそれぞれのパーツの端を縫い合わせて、1枚の布「反物」の状態にしていきます。
これが、バラバラになったパズルを元に戻すような作業になりますね。
洋服の場合はこのようなことはできませんが、着物はもともと1枚の反物から作られているので、戻すことができるのです。
③反物状態の着物を洗う
反物状態になったら、専用洗剤を使ってブラシなどでゴシゴシ水洗いをします。
ただ闇雲に洗うのではなく、生地に合わせた力加減や水の温度を見極めて洗う必要があるので、熟練の技が求められます。
④のり付けをする
洗い終わった反物状態の着物を板に張り、のり付けなどを行います。
この張る作業があることから「洗い張り」と言われているのですね。
⑤乾燥させる
そのまま自然乾燥させます。
⑥湯のし作業を行う
最後に機械を使いのし作業を行い、シワや縫い線などをきれいに伸ばして整えます。
洗い張りの作業はこの状態で完了です。
洗い張りを依頼した場合は、反物の状態で返却されることになります。
⑦仕立て直す
必要に応じて仕立て直しの作業を行います。
ほどく前の状態に戻してもらう場合には、再仕立てを依頼します。
サイズを変更したい場合は、サイズ直しをしてもらい仕立ててもらうこともできます。
このような工程で洗い張りを行うのが一般的になります。
着物クリーニング店の「洗い張り」の料金は、反物の状態にして洗うまでの作業になっていることが多いです。
また着れる状態の着物に戻すための「仕立て料金」はまた別途必要になります。
洗い張りの料金の相場は、例えば振袖なら16,000~20,000円ほどになりますが、仕立て料金は35,000~70,000円ほどかかります。
トータルで考えるとかなりの費用になりますね。
洗い張りのメリットデメリット
このように大変な作業が必要になり高額な費用がかる洗い張りですが、その分得られるメリットが多いです。
洗い張りのメリット、さらにデメリットもご説明しましょう。
洗い張りの4つのメリット
洗い張りのメリットを挙げると以下のようになります。
①きれいな状態が蘇る
洗い張りでは、油溶性汚れも水溶性汚れをスッキリ洗い流すことができます。
そのため薄汚れた状態だった着物でも、ツヤが戻り、新品のような美しさを感じられるでしょう。
光沢も戻ってくるので、古い印象がガラリと変わることも多いです。
丸洗いでは再現できないきれいな状態になるところが一番のメリットと言えますね。
②風合いが良くなる
さらに、風合いが良くなるというメリットもあります。
着物は何度も着るうちに生地がゆるんできてしまうことがあるでしょう。
洗い張りをして着物をピンと張ることで、着物ならではの風合いが戻ってきます。
着心地も見た目もぐんと良くなるでしょう。
③寸法を変えて仕立て直すことができる
洗い張りをするメリットは着物がきれいになるだけではありません。
洗い張りでは一枚の布の状態にするため、寸法を変えて仕立て直すことができるメリットがあります。
母親の古い着物を自分の体に合わせて寸法を変えたり、子どものために寸法を変えることもできるのです。
「体型が変わったからもう着れない…」という若い頃の着物でも寸法を変えてまた着ることができますね。
④他の着物に仕立て直すこともできる
寸法を変えるだけなく、思い切って他の着物に仕立て直すこともできます。
振袖を訪問着などに変えることで、また違った楽しみ方ができるでしょう。
反物の状態で受け取り、後日自分でバックなどにリメイクすこともできますね。
洗い張りの5つのデメリット
洗い張りには着物がきれいに蘇るというメリットや、仕立て直しをすることでサイズを変えたり違った着物に変えられるメリットがあります。
しかし、洗い張りはデメリットが多いのも特徴です。
以下のようなデメリットがあることは事前には把握しておきましょう。
①反物の状態で仕上がる
洗い張りの注意点として覚えておいていだだきたいことは、反物の状態で仕上がるのが基本ということです。
昔は、着物を洗う作業ができなくても、縫って仕立てることができる人がほとんどでした。
そのため、お店では解いて洗う作業までを行い、反物の状態でお客さんに戻していたという流れがあるからです。
現在は、自分で仕立てられる人は稀ですので、着物の状態にして戻してほしい場合は、別途料金を払って再仕立てをお願いする必要がありますね。
これを知らずに洗い張りを利用してしまうと、「高い洗い張りの料金を払ったのに反物の状態で戻ってきてびっくりした…」ということになってしまうので気を付けたいですね。
②生地が傷んでしまうことがある
生地が傷んでしまうことがあるというデメリットもあります。
洗い張りは細心の注意を払って作業されるものですが、生地の状態が悪いと、糸をほどく段階で、生地が破れてしまうことが稀にあります。
また、繊細な刺繍などが施されている場合は、刺繍部分が歪んでしまうこともあるでしょう。
③時間がかかる
洗い張りは時間がかかるという難点もあります。
お伝えしてきたように、洗い張りは1枚1枚手作業で行う上に、工程も多いため、時間がかかります。
1~2ヶ月はかかると思った方が良いですね。
クリーニングが多いシーズンの場合にはもっとかかることもあるでしょう。
着用する予定がない着物なら良いですが、急ぎで利用する場合には注意が必要ですね。
④料金が高い
洗い張りのデメリットとして最も大きいと言えるのが、料金が高いということでしょう。
上の章でもお伝えしたように、洗い張りは高額の費用がかかります。
例えば振袖の場合、洗い張りだけでも16,000~20,000円ほどが相場です。
さらに再仕立てをする場合は、プラス35,000~70,000円ほどかかるため、高い場合には10万円近くかかることもあるでしょう。
長く着続けたいお気に入りの着物や、高額の着物の場合は、料金が高くても良いと思えるかもしれませんが、それほど思い入れがない着物の場合は高く感じてしまいますね。
⑤洗い張りに対応しているお店は少ない
昔は当り前に行われていた洗い張りですが、最近は対応しているお店が少なくなっているんが現状です。
洗い張りを行うためには、機材はもちろん、熟練の技が必要になるためどんなお店でもできるわけではありません。
着物専門のクリーニング店であっても、「丸洗いだけで洗い張りは対応していません」というケースも多いです。
洗い張りを依頼する場合は、クリーニング店探しがちょっと大変かもしれませんね。
洗い張りはこんな人におすすめ
メリットの多い洗い張りですが、意外とデメリットも多いので注意が必要です。
メリットデメリットを踏まえると、洗い張りがおすすめなのは以下のような方になるでしょう。
- 長い間お手入れしていなかった着物をきれいに蘇らせたい
- 張りがなくなった着物をパリッとさせたい
- 汗で全体が汚れてしまった着物をスッキリきれいにしたい
- 全体的にカビが生えてしまった着物をきれいにしたい
- 古い着物を娘のためにきれいにして渡したい
- 体型が変わったからサイズを変更したい
- 違う種類の着物に変えて楽しみたい
- お気に入りの着物をバックなどにリメイクしたい
- 多少費用がかかっても大切な着物を無駄にしたくない
このような方は、洗い張りを検討してみると良いですね。
費用はかかりますが、それ以上に得られる満足感のほうが多いでしょう。
しかしながら、前述したように、どのクリーニング店でも洗い張りを行っているわけではありません。
着物を専門にクリーニングしているお店でも洗い張りは行っていないことが多いので注意が必要です。
クリーニング店のホームページの料金表の中に「洗い張り」の料金があるかチェックしてみてくださいね。
洗い張りにおすすめの着物クリーニング専門店2社をご紹介!
ここまで洗い張りの方法をはじめ、メリットデメリットなどをお伝えしてきました。
その上で洗い張りをしたいという方は、洗い張りに対応している着物クリーニング専門店を探しましょう。
ただし、ネットで検索するとたくさんの着物クリーニング店が出てきて迷ってしまいますよね。
1社ずつ探すのは大変…という方のために、ここからは当サイトがおすすめする洗い張りに対応している着物クリーニング2社をご紹介したいと思います。
No.1:油溶性汚れも水溶性のシミも入念に落とす!「きものtotonoe」
洗い張り料金(税込) | 11,000円~ |
洗い張り+仕立て直し料金(税込) | 見積にて |
送料(税込) | 往路はお客様負担、復路はお店負担 |
保証サービス | 1週間以内無料で再仕上げ |
洗い張りのおすすめポイント | ・油性の汚れも水性のシミも入念に落とす ・老舗の悉皆屋が手がけるクリーニング店なので安心 |
気になる点 | 具体的な料金がわからない |
きものtotonoeは、悉皆屋として120年以上の歴史のある老舗「有限会社丁子屋」が手掛ける着物クリーニング専門店です。
年間6万点以上の実績があり、着物の有名雑誌「きものSalon」でも紹介されるなど注目度の高いお店でもあります。
高品質でありながらリーズナブルな価格で利用できる気軽さが人気の理由となっています。
洗い張りのおすすめポイント
高い技術が求められる洗い張りを利用する場合は、信頼と実績のあるお店にお願いしたいですよね。
きものtotonoeはただのクリーニング店ではなく、洗い張りを専門とする悉皆屋が手がけているので、安心して洗い張りをお願いすることができるでしょう。
反物の状態にした着物は、油溶性汚れに強いドライ溶剤ですみずみまで洗った後に1日乾燥させ、さらに水洗いをして水溶性のシミまで落としていきます。
徹底的に汚れを落とす作業を行うので、スッキリきれいな仕上がりが期待できるでしょう。
気になる点
上表のように洗い張りの料金は目安がありますが、具体的な金額はわかりません。
また、仕立て直し料金についても明確にはされていないので注意が必要ですね。
きものtotonoeは、1枚1枚の着物に合った洗いをするために、「匠の診断」という有料の検品サービスを行っているのが特徴です。
洗い張りの場合にも、しっかり入念な検品をした上でどのような作業を行うか決めるため、料金は設定されていないのでしょう。
あらかじめ予算を考えておきたい方にはちょっと使いにくさがありますね。
洗い張りを行っている貴重なクリーニング店の中でも、特に実績と信頼度の高いお店ということでおすすめに選んでいます。
料金がわかりにくい部分はありますが、しっかり検品と見積りを出してもらえるので安心感はありますね。
きものtotonoeはどんなクリーニング店なの?という方は、こちらの記事「きものtotonoeの着物クリーニングの口コミ評判を検証!」をご覧ください。
実際にきものtotonoeを利用している方の口コミ情報をもとに、どんなサービスなのかご紹介しています。
No.2:しなやかな風合いとツヤツヤ光沢が蘇る「きもの辻」
洗い張り料金(税込) | 袷着物23,760円、振袖31,680円、留袖36,960円など |
洗い張り+仕立て直し料金(税込) | 振袖81,180円、留袖91,930円、小紋60,060円など |
送料(税込) | 5,500円以上で送料無料 |
保証サービス | 10日以内全額返金保証 |
洗い張りのおすすめポイント | ・洗い張り料金、仕立て直し料金が明確 ・独自の仕上げ作業によりふっくらツヤツヤに仕上がる |
気になる点 | 料金が高い |
150,000着以上の実績をもつ「きもの辻」は他店では落ちなかった着物の染み抜きを依頼されることも多いほど、高度な技術に定評がある着物クリーニング専門店です。
30年前の染み抜きにも成功するほどの高い技術と、さらに意識の高さを感じられるお店でもありまます。
洗い張りのおすすめポイント
上表のように、着物の種類ごとに洗い張り料金、仕立て直し料金が設定されているので、予算を組みやすいというメリットがあります。
ホームページでは、襦袢や帯など、さらに多くの種類の着物の料金が表示されていますのでチェックしてくださいね。
追加でしみ抜きなどが必要になると金額が変わってくる場合もありますが、目安として予算をあらかじめ考えておけるので便利ですね。
また、きもの辻は、独自の仕上げ作業により、ふっくらツヤツヤに仕上げるのが特徴です。
パサパサ状態の着物も新しく生まれ変わるでしょう。
このような仕上げの良さもおすすめポイントと言えますね。
気になる点
上表にあるように、洗い張りの金額も、仕立て込みの料金も高めと言えるでしょう。
もともと洗い張りは高額なものなので、この程度の金額になるお店はたくさんありますが、やはり高いと感じる方は多いでしょう。
品質よりもできるだけ低価格を求めたい場合は、あまり向いていないかもしれませんね。
きもの辻は料金の高さはありますが、それに見合った洗い張りを行っているお店と言えます。
仕立て直しの際には、希望に沿った寸法に仕立ててもらうことも可能なので、体型が変わって着れなくなった着物をまた着たい方、親から子へ着物を受け継いでいきたい方にもおすすめです。
きもの辻の着物クリーニングについては、こちらの記事「きもの辻の着物クリーニングの口コミや評判をチェック」をご覧ください。
実際に利用した方の口コミから評判を検証しています。
洗い張りはメリットの多いクリーニング方法!ただし注意点を理解して利用しよう
今回は、着物のクリーニング方法の1つである「洗い張り」についてお話してきました。洗い張りとは一度着物をほどいて反物の状態にしてからガシガシ水洗いする昔ながらの洗い方です。
これにより薄汚れていた着物も、たるんでしまった着物も、まるで新品のようにふんわり、そしてシャキッと仕上がります。
着物を大切に着続けたい方にはおすすめのクリーニング方法と言えますね。
再仕上げをする時に寸法を変えることもできるので、多様な使い方ができるメリットもあります。
ただし、反物の状態で戻ってくるため仕立て直しにはさらに別料金が必要になる等の難点もありますので、しっかり理解しておきたいですね。
洗い張りは通常の着物クリーニングに比べて高額なものになりますので、きちんと納得した上で利用しましょう。